大学院で細菌学(微生物学)を専攻しました。
悪性腫瘍などで入院した祖父・祖母は、肺炎で亡くなりました。
小学生の時です。
ヒトは最終的に感染症に負けてしまうということを実感し、
目に見えない敵にヤラレテしまうことが不思議で、
大学卒業後、臨床ではなく、研究の世界に身を投じたのです。
僕が学生の時から、表題にある「病巣感染」は言われており、
口腔内細菌が原因として発症する全身の感染症として、
亜急性(細菌性)心内膜炎や腎盂炎、関節リュウマチなどが、
教科書に書かれていました。
2008年2月に学研書院から発行された
口腔微生物学ー感染と免疫ー第2版によると、
病巣感染(focal infection )とは、限局性の慢性感染病巣(初感染)が
存在し、この初感染と直接的なつながりのない遠隔臓器あるいは組織に、
一定の器質的組織変化や機能障害(二次疾患)をもたらすことをいう。
と、定義されています。
歯性病巣感染の概念は、オーラル・メディスンの先駆者である、
歯科医師のウェストン・プライス(Weston Price)が1923年に、
DENTAL INFECTIONSの1巻Oral and Systemic と、
2巻Degenerative Diseases に1,174ページにまとめ発表されています。
1,174ページという莫大なページとなった背景には、
彼の一人息子が、う蝕が原因となった心臓病で失い、う蝕が心臓病の引き金となることを
実証しようと、1914年からアメリカの著名な医師達との共同研究の結果なのです。
そのなかで、歯科疾患と糖尿病などに関する記述も見受けられ、
今から100年も前から、歯科疾患と全身疾患の関連性は指摘されていたのです。
しかし、このプライスの病巣感染の研究は二重盲検試験ではないと、
評価しない方々も多く存在していたそうですが、医師の間では確かなものとして
評価されていたようです。
同年代の1917年、シカゴ大学医学部教授の医師、フランク・ビリング(Frank Billing)は、
FOCAL INFECTIONを発行し、ハーバード大学予防医学衛生学教授の医師、
ミルトン・ロスノー(Milton Rosenau)とともに、病巣感染の学問体系を確立させ、
口腔慢性感染症が第一次病変であることを、多くの症例をあげながら示し、
第一病変を取り除くことで二次病変が消失し、改善されることを証明されました。
日本でも、昭和初期に話題となっていたそうなのですが、
どうしても「修復」という「技術者」的技量に重きが置かれ、
感染などの医療をおざなりにしてきた感じがあります。
と、言うのも、当院を始めて受診された患者さんに、
口腔清掃に毎月来院していただきたいと説明すると、
「前の病院では3か月か半年に1度でよいと言われた」と、
怪訝そうな顔をされる方が多いからです。
これは、残念ながら歯科医師の感染に対する意識の違いであろうと思います。
病巣感染、特に口腔内の慢性感染症である、
辺縁性歯周組織炎(いわゆる歯槽膿漏)や
根尖性歯周組織炎(根っこの先に膿がたまる)は、
痛みなく進行する感染症(病気)で、痛みが出るまでの間に、
遠隔臓器に器質的変化(二次病変)を引き起こすのです。
本当の意味での「医科歯科連帯」を達成させるためには、
歯科医師自身の変革が大切であり、歯科疾患治療の重要性を
もっとPRしていかなければならないと感じています。
そして近い将来「糖尿病のための歯周治療」や「リュウマチ治療としての口腔清掃」と、
さらには、「高血圧症のための咬合治療」と「更年期障害のための咬合形体修正治療」など、
医者と同じ病名(保険傷病名)で、一人の患者さん治療が行える日が来る事を、
願っております。
最後までお読みいただきありがとうございました。
参考資料:奥田克爾著 「病巣感染」温故知新
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